ケニア動物サファリの旅 2018.6.22~7.01 20数台のサファリカ-に取り囲まれ怒るライオン 早朝野鳥の鳴き声で目覚め、ベランダに出てみた。夜明け前の庭に木立の黒い影が浮かび、 その間を小さな鳥が飛び交っている。朝の空気が清々しい。ここは標高1200m位の高原、朝の 気温は13~14度、日中でも25度位、赤道に近いところにありながら信じられないほどの快適さだ。 そういえば、夜中に動物のうなり声が聞こえていた。どうやら初めはライオン、そのあとは ハイエナの声だったらしい。このロッジは大きく柵で囲まれているが、その近くにやって来たの だろう。 朝食を済ませレストランの外に出てみると木陰の向うに、雪を戴き朝の柔らかい光を浴びた 堂々たる 山が聳えていた。標高5895m、アフリカ最高峰のキリマンジャロだ。 ここは東アフリカのほぼ中程に位置するケニアのアンボセリ高原。かってア-ネスト・ ヘミングウエイが訪れて狩猟を楽しみ、小説「キリマンジャロの雪」を執筆したところである。 その冒頭には ― 「この西側の頂上近く、ひからびて凍りついた一頭の豹の死体が横たわっている。こんな高い ところまで豹が何を求めてやってきたのか、誰も説明したものはいない」...と書かれている。 キリマンジャロ(標高5895m) キリマンジャロを遠望したあと庭内を歩いていると、樹上に止まっている小鳥が眼についた。 名前はよく分からない。ヒタキかコマドリの仲間か? その下には、色鮮やかな鳥がチョロチョロ歩いていた。思わずカメラを向ける、とても美しい、 近づいても逃げない、恐れない、ツキノワテリムクドリだ。 名前の由来は胸と腹の間に白い帯があるため。「ムクドリ」はムクノキの実を好んで食べることに よるなどの説がある。 ホテル庭内の樹上にいた野鳥 ツキノワテリムクドリ ツァ-メンバ-は6月22日深夜羽田を飛び立ち、ド-ハを経由して現地時間の午後2時過ぎ、 ケニアのナイロビに到着、さらに車で約5時間かけて午後8時過ぎ、アンボセリのホテルロッジに やってきた。日本との時差は6時間、所要時間は約26時間。 これから7日間、私たちはアンボセリ、ナイバシャ湖畔、マサイマラ、ナクル湖畔のケニア国立 自然保護区の動物サファリを楽しむ。 6月24日 アンボセリ国立公園 メンバ-はツァ-客12人(男性5人、女性7人)、ドライバ-はガイドを兼ねたドンガさんと ケネディさん、それにT.D社の女性添乗員大崎さんの総勢15人。 7時30分、2台のサファリカ-に分乗してホテル出発。 走りだしてほどなく、草原を歩くヒヒの家族連れが眼に入る。朝餉の食べ物を探しているらしい。 中には子供を抱きかかえているヒヒもいた。天敵はヒョウ。 アカシアの林の周りには丈高い草叢が生い茂り、その中をゆっくり歩きながら草を食むゾウが いた。アンボセリでは最も大事にされている動物だという。 子供を抱いて歩くイエロ-ヒヒ アフリカゾウ 広大な草原に出ると、遠く近く黒いものが動いている。 「あれ何?」...声を上げるものもいたが、車は突然スピ-ドを上げた。猛然と走りはじめた のである。 「ライオン、ファ-スト!」...車内にケネディさんの大きな声が響き渡る。ライオンが見つかった らしい。ドライバ-たちは互いに連絡を取り合っている、何か珍しい動物が見つかると一目散に そこへ走って行く。 やがて数台の車が集まっているのが見えてきた。どうやらライオンはその辺にいるらしい。 眼をこらすと左手に草原を歩くライオンがいた。歩くというより、ややスピ-ドを上げながら 走っている。何かに狙いをつけているようだ。 何かに狙いをつけ走って行くライオン 右手にはヌ-が立っていた。そのそばにはグラントガゼルもいる。すでに天敵に気づいている ようだ。 じっと立ちすくみ、相手の動きをうかがっているように見える。 ヌ- グラントガゼルとヌ- ライオンは大きく迂回し次第にヌ-に近づいて行く。ヌ-は安全距離を図っているようだ。 さらにライオン が近づくと、ヌ-は待っていましたとばかりに逃げてしまった。あっけない、 軽くヌ-にあしらわれていた感じ。ブッシュに忍びこみ、至近距離で不意をつくのであれば成功 したかもしれないが...1頭で獲物を仕留めるのは難しい。このライオンまだ経験が浅いのだろう。 肉食動物は瞬発力はあるが、持続力では草食動物に負ける。長く走れば追いつくことはできない。 この近くにはハイエナもいた。草原を歩きながら屍肉でも探していたのかもしれない。 ハイエナが活動的になるのは夜、集団で大きな草食動物でも倒してしまう。その強靭な顎は骨まで 咬み 砕き、草原の掃除屋ともいわれる。 プチハイエナ 草叢のなかに奇妙な鳥がいた。ヘビクイワシだ。冠羽が書記用の羽根ペンに似ていることから 書記官鳥とも呼ばれる。名前はヘビを蹴り弱らせて食べることに由来する。飛ぶこともできるが、 大半は長く太い足で地上を歩きまわり、ヘビの他に爬虫類やネズミ、ウサギなどを捕えて食べる という。 ヘビクイワシ サバンナのほとんどはイネ科の植物が占めているが、アカシアやヤシの木が草原を縁どっている ところもある。木の葉はキリン、その他の草食動物はイネ科などの植物を食料とする。 車はゆるやかに波打つ草原を走って行く。ドライバ-のケネディさんはとても眼がいい。顔は 前方を向いているが、その眼は180度見ている。小さな動物でも見逃さない。低い灌木が茂る ところに出たとき、 「イ-グル、イ-グル!」...彼は左手を指さしている。その方角に眼を向けると、木陰のそばに 何か動いて いるものがあった。「確かにイ-グルだ」...鋭い眼を光らせた顔だけわずかに見えて いる。鷲の一種だろう。 茂みから顔をのぞかせる 鷲の1種 アカシアの木が茂る下で、ゾウの群れがのんびり草を食んでいるところを通り過ぎ、湿原地帯に 出たとき、ダチョウの夫婦に出会った。非常に大きい、遙か遠くにいてもすぐ分かる。 ダチョウは草食性で視力もずばぬけてよく強靭な足で走ると時速約50km、持続力もあるそうだ。 オスは黒と白の羽根をもち、メスは灰色の羽根でオスより小柄。 名前は身体が大きく、ラクダ(駱駝)を思わせるような逞しい足をしていることから、中国で駱鳥 と呼ばれるようになったもの。 ダチョウ(黒い羽根がおす、灰色の羽根がメス) 湿原の遙か向うの湖に水鳥の大群が見える。フラミンゴだ。まさかここでフラミンゴが見られる とは...まったく予想していなかった。ズ-ムをいっぱいに伸ばしてカメラに収める。 この辺りの湖は乾期には干上がってしまう年もあるというが、今年は雨量が多くまだ水を湛えて いた浅瀬にフラミンゴの大群がやってきたのだろう。 名前はラテン語で「炎」を意味するflammaに由来する。 フラミンゴの大群 湿原にはアッと眼を見張るような鳥がいた。カンムリヅルだ。黄色の鶏冠、喉もとの赤、黒に 黄色の尾羽が色彩の乏しいサバンナの風景によく映えている。ただ優雅な姿とは違い、鳴き声は 壊れたラッパのような声を出すという。 カンムリヅル 水辺にはシロクロゲリとセイタカシギが見られた。ケリの仲間は日本でもタゲリ、ケリなどが 見られるが,飛ぶ姿はなかなか美しい。ふあふあと飛んで優雅である。ケリの名は「キリリリリ」 とか「ケリッ」という鳴き声に由来する。セイタカシギは、千葉県習志野の谷津干潟でよく眼に する。 シロクロゲリ セイタカシギ アンボセリ湖畔から展望の丘に向かう途中、ヌ-の群れに出会う。ここのヌ-は外からやって 来たのではなく、アンボセリ国立公園に棲みついているヌ-だという。名前はヌ-と鳴くことに 由来する。 ヌ-の群れ 時刻は10時20分、展望の丘に登る。そろそろ日差しが照りつけはじめ、暑くなってくる。 しかし空気は乾燥しており、むし暑さは感じない。丘からは360度広大な大地が広がり、眼下には 湿原、その遙か向うには赤茶色の草原が展望できる。 今は乾期の初めで、動物たちはサバンナのあちこちにに散らばっているが、乾期が続く頃には豊か な水を求めて、国立公園外にいる動物たちもこの湿原に集まってくるという。 展望の丘眼下に広がる湿原地帯 展望の丘には建物があり、その天井にツバメが巣をつくっていた。巣から顔を出した子ツバメ が可愛い。上空にはたくさんの鳥が旋回していたが、湿原にエサとなる何かがいるのかもしれ ない...。 巣から顔を出した子ツバメ 展望の丘の上空を旋回する鳥 湿原から再び草原に入ったところでシマウマの群れに出会う。白い身体に流れるような縞模様 が鮮やかだ。実に美しい。和名はシマウマとなっているが、ウマよりロバの系統に近い。天敵は ライオン、プチハイエナ、ナイルワニ、リカオンなど。 シマウマ ホテルロッジ近くの草原で、さかんに餌をあさるイボイノシシ、そこから少し離れた林の中に サバンナモンキ-がいた。イボイノシシはその名のとおり、眼の下と頬にそれぞれ一対のイボが ある。時速約50kmで走ることができるというからスゴイ。 サバンナモンキ-は茶色っぽい灰色と白色がまざる身体をしているが、顔は黒い。人間を恐れず、 弁当を開くときは要注意。 イボイノシシ サバンナモンキ- 午前のサファリを終えてホテルに帰る。部屋に戻る途中、樹上に野鳥が止まっていたが庭に 降りてきた。あまり人を恐れない、眼の上に白い眉がある。フタスジヤブコマドリのようだ。 フタスジヤブコマドリ 昼食後しばらく休憩して午後4時、夕方のサファリに出発。 ホテルを出て間もなく、最初に出迎えてくれたのがグラントガゼル。草原のなかにスックリと 立っていた。この足で走ると時速70kmになるという。時速100kmといわれるチ-タ-なら 捕えることができるだろうが、ライオンは不意をつかないかぎり捕えるのは無理だろう。 ちなみにライオンは時速48km~58km位。 少し走った道脇の窪みにはプチハイエナが眠っていた。私たちに気づくと頭だけ起こし辺りを 見ていたが、また眠ってしまった。夜の活動のために休んでいるのだろう。 屍肉をあさる、とかライオンやヒョウの獲物を横取りするとか、イメ-ジの悪いハイエナだが、 狩りの成功率は60%とも言われる名ハンタ-だそうだ。 グラントガゼル プチハイエナ 午前中に走ったコ-スとは違うようだが草原ではまた、ゾウやヌ-の群れ、カンムリヅルなど が見られた。 湿原に入ると珍しい水鳥たちに出会った。なかでもユニ-クなのがシュモクドリ、 ナポレオンの帽子のような頭をしている。哲学者のような風貌だ。 シュモク(撞木)は半鐘、鉦などを打ち鳴らすT字形の仏具だが、名前はそこからきている。 なるほど、この鳥の頭の形は撞木のイメ-ジだ。 シュモクドリ カヤツリグサの葉にヒメヤマセミが止まり、じっと水面を見つめていた。何か小魚を狙っている ように見える。カワセミの仲間でヤマセミよりかなり小さい。 ホバリングして狙いを定め、くちばしから水中に突っ込んで魚をとる。飛び込む際には太陽を背に して飛び込むため、魚たちから見るとその姿は太陽の中に隠れて見えなくなる。工夫をこらして 魚を 獲っているのだ。 ヒメヤマセミ 湿原の水溜りにはエジブトガン、アフリカクロトキ、アフリカトキコウ、アフリカレンカク、 アフリカヘラサギ、セイタカシギ、湖のほとりにはフラミンゴも見られた。夢中でシャッタ- を切る。 エジプトガンの眼の周りは濃い茶色、まるで眼鏡をかけているように見える。全体に色鮮やか でよく目立つ。一度、つがいになったら一生相手を変えないそうだ。 アフリカクロトキはトキの一種。頭は黒、尾羽は黒と白のツ-トンカラ-、嘴は湾曲している ので他の鳥と見分けやすい。 エジプトガン アフリカクロトキ アフリカレンカクはレンカク科の一種。漢字では蓮鶴と書き、蓮のような浮草の上でも軽々と 歩くことができる鶴というようなイメ-ジからつけられた名前。植物の間に潜む昆虫などを 捕えて食べる。 アフリカトキコウはコウノトリの仲間。岸辺ではじっと水面を見つめていることが多いが、水に 入るとひたすらエサとなるカエルや小魚、昆虫などを探したり食べたりしている。 アフリカレンカク アフリカトキコウ アフリカヘラサギはトキの仲間。ヘラのような嘴をもち、エサを獲るときはその嘴を左右に降り ながら、泥の中の小魚やカエルを探し出して食べる。 時刻は5時40分、そろそろ陽が傾きはじめてきた。ヘラサギたちはエサ獲りを止め、のんびり 毛づくろいをしていた。 アフリカヘラサギ 湖のほとりには、エサをついばむ十数羽のフラミンゴがいた。午前中に見た大群の華やかさは ないが、赤く染まった夕暮れの湖畔で眺める小群のフラミンゴの姿もまたいい。 フラミンゴ ホテルへ帰る途中、夕陽のなかに2頭のセグロジャッカルが現れてきた。夫婦かもしれない。 ジャッカルはイヌ科の夜行性、ノウサギやガゼルなどを襲ったり、ライオンの後などを付いて まわり、素早く獲物にかじりつき、肉をかみとって逃げることもよくあるという。ハイエナや ハゲタカと同じように草原の掃除屋でもある。そろそろ獲物を求めて動きはじめたようだ。 セグロジャッカル 6月25日 アンボセリ→ナイバシャ湖→エレメンタイタ湖 7時ホテル出発、走りはじめて30分、雄大なキリマンジャロが見えてきた。山頂に雪を戴き 裾野を大きく広げている。タンザニヤ側にあるアフリカの最高峰だが、この辺りから眺める姿が いちばん美しい。 この風景のなかに添乗員の大崎さんに入ってもらい、勧められて私も一緒にカメラに収まった。 草原の向うに聳えるキリマンジャロを背に大きく手を広げた彼女の姿は、みなぎる爽やかな若さ を感じる。 キリマンジャロ(標高5895m) 添乗員の大崎さんと一緒に 大崎さん その後6時間余り走り、アフリカ大陸を南北に縦断する大地溝帯が見えるグレ-トリフトバレ- の展望台に着く。この谷は巨大なプレ-ト境界のひとつで、幅35~100km、総延長7000kmにも なるという。気が遠くなるような長い年月をかけて形成された断層の亀裂で、今でもその割れ目は 大きくなりつつあると いう。つまり、アフリカ大陸が引き裂かれつつあるというのだ...この景観は あまりに広大で、うまくカメラに収まらない。 ここで昼食をとったあと何気なく崖下をのぞくと、大きなネズミのような動物がいた。チョロ チョロと動きまわっている。食べ物でもあさっているのか...。 動物の名前はイワハイラックスで、ネズミかタヌキの仲間のように見えるが、そうではないらしい。 外見からはほど遠いがゾウに近い動物と考えられているそうだ。 イワハイラックス 午後3時前ナイバシャ湖畔に着く。アンボセリから8時間近くかかっている。辺りに人影は ほとんどない、私たちツァ-メンバ-だけだ。 ボ-ト乗り場の近くではホワイトペリカンの泳ぐ姿が、岸辺ではスキハシコウが見られた。 ペリカンは嘴から喉にかけて大きな袋状の咽喉嚢をもち、これで魚を捕える。渡り鳥。 スキハシコウはコウノトリの仲間。名前は、嘴を閉じてもすき間があることに由来する。 ホワイトペリカン スキハシコウ 2艘のボ-トに分乗して湖に乗り出す。湖面に出てすぐ眼についたのが精悍な顔つきをした タカ、鮮やかな白黒の羽根、実際には赤褐色も混じるサンショクウミワシだ。遠く近く何羽かが 樹上に見える。ボ-トの案内人が魚を投げると、遠くにいた1羽がやってきて水中に舞い降り、 見事に捕えて森に帰って行った。このウミワシ羽根を広げると2m位あり、飛び込む瞬間は迫力 満点。しかし写真は取り損ねた。このウミワシは魚類を主食とするが、魚のいないところでは 自分より大きいフラミンゴを襲うこともあるという。 上を見上げると別の1羽が木に止まっていた。カメラを向けると、最初は気づかれ逃げられて しまったが、さらに他の木に止まる1羽にねらいを定め何とか撮ることができた。 サンショクウミワシ ボ-トは湖岸近くをゆっくり走って行く。辺りの景色をぼんやり眺めているとき、やや遠くに 黒いものが見えた。カバだ!、何頭かのカバが水面から顔を出したり潜り込んだりしている。 その姿は見えたかと思うとすぐ消えてしまう。カメラの焦点を合わすのが難しい。 日中カバは水の中にいる。行動するのは夜。体重は大きなもので3トン以上になる。陸上ではゾウ に次ぐ重さだ。口は150度くらいまで開けることができ、鋭い牙がある。一見おとなしそうに見え るが性格は獰猛、アフリカで最も危険な動物とされている。 水面に顔を出すカバ 湖の周囲は鬱蒼としたアカシアの森が茂り、何軒かの小屋も見える。30分ほどで対岸の クレセント島に着く。 ナイバシャ湖畔の風景 ボ-トでクレセント島に渡るメンバ- クレセント島に上陸しゆるやかな坂道を上ってゆくと気持のよい草原が広がり、私たちを出迎え てくれているかのようにシロクロゲリ、セイタカシギがすっくりと立っていた。やや遠くには ホロホロチョウも見える。 これからガイドの案内でウオ-キングサファリを楽しむ。ここには猛獣はいない、いるのは草食 動物だけ、安心して歩ける。 山頂から下って行くと眼に入ってきたのがヌ-の群れ、さらにインパラの大群、トムソンガゼル に出会う。いずれも私たちが近づくとじりじりと逃げて行く。車では近づいてもさほど逃げないが、 生身の人間には多少警戒しているのだろう。 インパラの群れ インパラのオス トムソンガゼル やや遠いがウオ-タ-バックも見える。こちらはインパラやガゼルよりかなり大きい。 シマウマものんびり草を食んでいた。 ウオ-タ-バック ウオ-タ-バック シマウマ 草原から木々が生い茂る森の中を湖岸沿いに歩いて行く。キリン目当てだがなかなか見つから ない。途中サンショクウミワシ、エジプトガン、カバなどに出会いながら歩くこと20数分、 ようやくキリンの首が見えてきた。近づいてみると4頭いた。子供もいる。木の葉を食べたり時々 こちらを見たりしているが驚いた様子はない。人間に慣れているのだろう。 マサイキリン その後迎えのボ-トに乗って船着場で車に乗り換え、ス-パ-に立ち寄ったあとエレメンタイタ 湖畔のホテルロッジに到着。 6月26日 エレメンタイタ→マサイマラ 早朝、2階の部屋を出たとき眼の高さにアカシアの花が咲いていた。丸く小さい白い花だが 先端は赤い。房状にたくさんつけた花の姿はなかなか可愛い。日本で一般にアカシアと呼ばれて いるニセアカシア(ハリエンジュ)とは、花も葉も木肌もまったく違う。トゲも本種のほうが 長く鋭い。 アカシアの種類は熱帯で数百種あるといわれるが、本種の幹は黄緑色で、現地ではイエロ- アカシアと呼ばれていたが、正確にはイエロ-フィ-バ-ツリ-。湖畔のような水の豊富なところ に育つという。 イエロ-フィ-バ-ツリ-(アカシアの1種) 庭を歩いていると、木の上に止まっている尾羽の長い鳥が眼についた。黒い頭に羽根は赤く 腹は白い。アフリカサンコウチョウのようだ。すぐ近くのアカシアの木には黒い鳥が止まって いた。こちらはよく分からない。 アフリカサンコウチョウ ロッジの庭にいた野鳥 7時エレメンタイタを出発、6時間かけてマサイマラのホテルロッジに到着。昼食後部屋に入る。 部屋はテントロッジということではあるが、コテ-ジタイプでシャワ-、トイレは清潔、私の 部屋はベッドが3つもある広さで快適。天井から吊るされた蚊帳も使えるようになっており、殺虫 スプレ-も置かれていた。 この部屋で3連泊。アンボセリ、エレメンタイタのホテルも同じような タイプ。 マサイマラのホテルロッジ 部屋で休憩後、午後4時ホテル出発、マサイマラ国立公園のサファリ・ドライブに出かける。 ここで最初に出迎えてくれたのはイボイノシシ。鼻までせりあがった長い牙をもち精悍な風貌だが、 どこか愛嬌を感じる。何かに驚くと猛スピ-ドで逃げて行くが、ある程度走ったところで必ずクル ッと振り返るそうな。なかなかユ-モラスなイノシシだ。 イボイノシシ 車は見渡す限りの大草原のなかを走っている。遠く丘陵の麓では悠々と木の葉を食むマサイ キリン、数頭のゾウの姿も見える。 突然車はスピ-ドを上げはじめた。何かの情報が入ったらしい。やがて、草原の1か所に集まった サファリカ-が見えてきた。10数台はいる。車はあとからあとからやってくる。 ドライバ-が強引に車の渋滞の中に入ったとき、草叢を行く10数頭のライオンの群れが眼に 飛び込んできた。その姿は見えたり隠れたりしている。これから狩りに出かけて行くところらしい。 しかし、行く手を車に阻まれたライオンは、牙をむき出し凄い形相で怒っていた。 「この人間のやつめ!」...そう思っていたのかも...。 20数台のサファリカ-に取り囲まれ怒るライオン 数えてみるとライオンは16頭いた。子供もいる。ライオンは右手に方角を変えて進もうとする が、車は先回りをしてまた前方に立ちふさがる。ライオンはしばらく様子を見ていたが意を決し たか、車の間をぬけて去って行った。 車の方を見ているライオン ライオンの子供 草叢を行くライオンの群れ ライオンの群れから離れ走ること15分、大草原に長く首を伸ばしたダチョウがいた。背丈は2m 以上あり、遠くからでもすぐ分かる。羽根が黒い、オスのダチョウだ。 ダチョウ ゾウの家族連れに出会う。近づいてみるとさすがに大きい。悠然と歩く姿には草原の王者の 風格を感じる。その雰囲気は平和、平穏、やさしさか...しかし親子連れに近づき、車のエンジンを つけっぱなしにしておくと怒ることがある。 アフリカゾウ さらに走ったところでバッファロ-の大群に遭遇した。数百頭はいるだろうか...。 このバッファロ-に感じるのは力強さ。草食獣のなかでは最も気が荒く、ときどきサファリカ- をひっくり返したりすることもあるという。鉄兜のような頭から出た太く鋭い角で突かれたら、 ライオンでもひと たまりもないだろう。ライオンに襲われた仲間を、何頭かで協力しあい救い だした映像を見たことがある。 バッファロ-の大群(アフリカ水牛) 6月27日 終日のマサイマラ・サファリ 今までのサファリは朝と夕刻に分けて出かけていたが、今日は弁当持参で終日のサファリ ドライブ。 7時半ホテル出発。ゲ-トを出るとすぐ朝餉の草を食むイボイノシシ、バッファロ-、インパラ、 そして初めてトピの群れに出会う。みな草を食んだり、ときに走り出したり、立ち止まって辺りを 警戒したりしている。トピの体は赤茶色、遠くから見ても分かりやすい。 ト ピ トピの群れ トピによく似たコンゴニもいた。身体の色はトピより薄く、角の形は湾曲している。 コンゴニ 広い草原に点々と散らばる灌木のひとつを通り過ぎようとしたとき、車が止まった。ドライバ- が指さす方を見ると、茂みの中に何か動いているものがある。よく見ると、ホロホロチョウだ。 ケネディさんの眼はスゴイ。 茂みの中にホロホロチョウ 車は辺りをぐるぐる回っているように思えたが、やがて数台のサファリカ-が止まっている ところに行く。そこには草叢を歩くライオンがいた。何か獲物を探しているようだ。眼つきが鋭い。 草叢を歩くライオン ここから少し離れたところにトムソンガゼルの群れがいた。のんびり歩いているように見えるが、 時々うしろをふり返ったりしている。ガゼルのいちばんの天敵、チ-タ-を警戒しているのかも。 トムソンガゼル 30分後小高い丘に上ってきたとき、草原の上に横たわっているライオンがいた。眠っているよう には見えない、ぐったりしている…死んでいるのかも、いやたしかに死んでいる…一瞬そう思った。 あとからやって来たメンバ-の一人も 「年老いて死んだのかな…寿命だね」…などと言っている。ところが私たちの声が聞こえたのか、 ライオンはむっくりと起き上がってきた。見事なたてがみをしたオスライオンだ。座り込んで、 手で顔をぬぐったり舌を出したりしている。まだ眠そうだが表情はおだやか、人間を見ても意に 介していない。前夜獲った獲物で腹は満ち足りていたのだろう。さすが百獣の王、堂々たる風格だ。 オス ライオン その後車は、長い時間をかけて波打つ丘陵をいくつか越えながら南下して行く。目的は、 タンザニアのセレンゲティから移動してマラ川を渡ってくるヌ-の大群を見ることだった。しかし、 時期的に少し早いのでは...そう私は思っていたが、昨年はやって来たというのだ。ヌ-の大群に 遭遇したというのである。もしや…という思いで多少胸をときめかせながら昼前マラ川の河畔に 着いた。ところが辺りは静かだった。ヌ-の姿はどこにもない、観光客も少ない…やはり早すぎ たようだ。今年の雨期は雨が多く、セレンゲティにはまだ緑の草がたくさん残っており、ヌ-の 大移動は昨年よりかなり遅れているということだった。予想したことではあったが、少しガッカリ した。しかしやむをえない。 保護区の施設前で昼食をとったあと、辺りをブラブラ歩く。橋から眺めると川の水位はまだ高く、 水面から顔を出すカバがいた。ここはカバが集まってくるポイント、流れの早いところでも何頭か 見られた。対岸はタンザニアである。 マラ川の水面から姿を現すカバ ヒポプ-ル付近のマラ川 川岸ではナイルワニが横たわっていた。体長はふつう4m~5.5m位といわれる。遠くから見て いるのでさほど大きくは見えない。寝そべっているようだが近づくと危ない、いきなりガブッと やられるかも。 セレンゲティから移動してくる100万頭とも150万頭ともいわれるヌ-やシマウマの大群は、 命がけでこの川を渡って行くが、かなりの数がナイルワニの犠牲になっていることだろう。 ナイルワニ ナイルワニ 倒木の上にカラフルなトカゲがいた。体色は鮮やかな赤と青、カメラを向けても逃げない。 食べ物でも欲しがっているのかと思ったが、そうでもないらしい。肉食性で昆虫などを主食に しているという。とぼけた顔で辺りを動き回っている。愛嬌のあるトカゲだ。 名前はレインボ-アガマ、気温の変化で体色が代わることに由来する。日中体温が上がると カラフルな色になり、夜体温が下がるとくすんだ灰色になる。ただこれはオスだけで、メスの 体色は緑がかった黄色。 レインボ-アガマ(オス) レインボ-アガマのオス レインボ-アガマのメス 草地には数種類の野鳥が見られた。弁当の食べ物をねだりに来ている様子、ムクドリやスズメ の仲間だと思われるが名前はよく分からない。トサカゲリもいたが、こちらは少し離れた草原に ポツンと立っていた。 ムクドリの仲間 スズメの仲間 トサカゲリ マラ川を離れ、ケニアとタンザニアの境界に立つ石塔のそばでしばらく休憩。大地は赤く、石塔 も赤い。辺りは大草原が広がり、そのなかに低い灌木が帯のように連なる。 ケニアとタンザニアの境界に立つ石塔 ツア-のサファリカ- 時刻は午後1時、車は大草原を延々と走り続けるが動物らしきものは見当たらない。肉食動物は 昼寝でもしているのだろう。1時間ほどしてようやくゾウの親子連れに出会う。さらに1時間走った ところで、今度はインパラの群れがいた。 インパラとグラントガゼルの見分け方は難しいが、お尻の方から見ると分かりやすい。インパラは お尻両脇の黒い線と尻尾の黒い線が「川の」ように縦に3本並んでいるが、グランドガゼルの尻に はそれがなく、全体に白い。ただ尻尾の先だけ黒くなっている。 インパラ グラントガゼル ソ-セ-ジツリ-があった。ノウゼンカズラ科に分類される1属1種の樹木。実がソ-セ-ジ に似ているのでこの名前がついた。そのままでは食べられない。薬用植物に利用されたり、実を 発酵させて酒をつくることもできる。また木材からカヌ-の舵やオールをつくるところもある そうだ。 ソ-セ-ジツリ- 丘陵の坂道を上ったところで、数台の車が集まっていた。どうやらヒョウがいるらしい。 ドライバ-が指さす遠くの樹木の中に黄色い小さな物体がのぞいているが、肉眼ではとても ヒョウには見えない。距離は200m以上ありそう。もう少し近づいてもらいたい、すでにその木の 下まで行っている車もある。あとからやってくる車も次から次に続いているのに…と思っていたが、 わがドライバ-は動かない。 「道のないところに行くのは厳禁、もしレンジャ-に見つかれば厳しく罰せられる、運転停止も ありうる、すでにレンジャ-の車は来ており、違反した車のナンバ-を写真に撮られている」...と いうのだ。やむをえない、ズ-ムをいっぱい伸ばしてカメラを向けると、ヒョウらしき姿が見える。 しかし、手振れして上手く入らない。何枚も失敗したあと、それらしき1枚を撮ることができた。 ただ顔は木の陰で見えない。 木の上に横たわるヒョウ 6月28日 マサイマラのサファリ 早朝6時15分ホテルを出発してまもなく、東の山から太陽が上りはじめ、空は赤く染まってきた。 やがて、見渡す限りの大地が、そこを埋める草原が、そのなかに立つ樹木が、遠くなだらかな山の 稜線が黒いシルエットとなって浮かび上がり、動きはじめたライオンも、シマウマも、ゾウも、 インパラも、朝の光に包まれていた。サバンナの夜明けである。 赤く染まったサバンナの夜明け この早朝からすでに草原を走る何台かのサファリカ-が見られ、遠く上空にはいくつかの気球が 浮かび、広大なサバンナを見渡しながら動物たちを探す、バル-ンサファリの姿もあった。 気球に乗って動物を探すバル-ンサファリ ホテルを出てから1時間後、サファリカ-が集まっているところに行く。そこにはかなりの近さ でライオンの家族がいた。メスライオンはもちろんオスライオンも草叢を歩いていた。何かを狙っ ているようにも見える。もう1頭のオスライオンと子供は茂みに座り込み、その様子を見つめて いた。ライオンでも子供は可愛い。 草叢に座り込み辺りを見ているオスライオン ライオンの子供 草原を行くオスライオン この近くには10頭前後のシマウマが見られ、何頭かは草を食み、何頭かは警戒するかのように 辺りを見回していた。最大の天敵、ライオンの匂いを嗅いでいたのかもしれない。 シマウマの群れ ホテルへの帰り道、道脇にシマウマの屍体があった。その屍体の内臓と肉はほとんどなくなり、 血のついた頭とあばら骨がわずかにその形を残していた。前夜ライオンに襲われたものらしい。 10時過ぎ、いったんホテルに帰る。ロッジの庭を歩いていると、またサンコウチョウに出会った。 木の間を飛び回っていたが、ヒョイと木の枝に止まった。日本に夏鳥としてやってくるサンコウ チョウは全体に黒ずんでいるが、こちらはカラフル、とても美しい。尾羽はさほど長くない、メス のようだ。 アフリカサンコウチョウ レストラン近くには実をつけたイチジクの仲間が見られ、その近くの木には、これまたカラフル な鳥が止まっていた。腹は鮮やかなオレンジ、眉は白い。調べてみたらマミジロツグミヒタキと 分かった。東アフリカから南アフリカに分布する野鳥らしい。 イチジクの仲間 マミジロツグミヒタキ 朝食後、ホテル近くのマサイ族の村を訪ねる。彼らはカラフルな赤い服を着て出迎えてくれた。 若者たちはみな長身でスマ-ト、太った人はいない。マサイの一人から現在のマサイ族の生活状況 の説明を受けたあと、歓迎の踊りなどいくつかのダンスを披露してくれた。リズミカルに手足を 動かし、ときに高く跳躍する 踊りが多かった。一段落したあと、メンバ-の女性たちも一緒に踊り はじめ、私も強引に引きずり込まれた が手足を不器用に動かすだけ、はたから見たらタコ踊りの ように見えたかもしれない。 マサイ族の若者と一緒に ケネディさん、マサイの案内人、大崎さん 踊るマサイ族の若者 マサイ族の若者と一緒に マサイ族の女性 色鮮やかな赤い服を身に着けているのは、ライオンなど動物たちに 「俺たちはお前らより強いんだ」ということを見せつけるためでもあるらしい。かってはライオン と戦い、最初にヤリを突き立てたものが勇者として崇められていたが、そうした慣習は今はなく なっているという。大事な観光資源である動物を殺戮することは禁止されているからだそうだ。 踊りが終わったあと、彼らが住む囲いのある広場に案内された。彼らの庭でもあるが、あちこち に牛糞が散らばっていた。うっかりすると踏んでしまいそう、用心しながら歩いて行く。 そこで見せてくれたのが火起こしのしかた。丸い穴を開けた小さな板切れに棒を指しこみ、回転 しながら発煙させる。その火種を枯れ草に移して燃やすのである。何とも原始的で、日本の縄文 時代を想像したく なるようなやりかただ。マッチかライタ-を使えばいいのに、と思うのだが...。 彼らの伝統を頑固に守り続けようとしているのか、あるいは徹底して無駄を省き節約しょうとして いるのか...。 板切れに指しこんだ棒を回して発煙させ、火種を枯れ枝に移すマサイの人 庭の周囲には土壁の家が何軒か並んでいた。家は泥と牛糞と枯れ草を練り込んでつくられたもの。 中は暗く電気は灯されていない。あるのはわずかな生活用品とベッド、牛を入れるスペ-スだけ だった。遊牧の民であった彼らは、今は国立公園内での遊牧はできない。ただ牛は今でもマサイ族 にとって重要な財産。 1夫多妻制で、牛を沢山持っている男は何人でも妻をめとることができるという。ここの人たちは、 観光客相手のイベントや、手作りの商品を売って現金収入を得ていると思われる。 マサイ族の家 ホテル玄関前で、槍と楯をもったマサイ族の青年がいた。武器をとって戦う勇猛なマサイ族戦士 のスタイルなのだろう。チップは要らないと言っていたが、ツア-メンバ-3人に写真を撮らせて くれたこともあって謝礼として1ドルを渡すと、人なつっこい笑顔を見せてくれた。 槍と楯をもったマサイ族の青年 午後4時、再びサファリに出かける。ホテルをを出てからほどなく、草原の中をゆっくり歩く キリン、道脇の窪みで昼寝をしているハイエナが見られた。さらに行くと、草叢で何かの肉を 食いちぎったり、辺りを見回したりしている大きなハゲワシの姿があった。よく見ると、それは 小さくなったシマウマの残骨だった。午前中に見たあのシマウマだ。骨はその何分の1かになって いる。その骨にわずかに肉がついていたのだろう。位置は少しズレていたが、ハイエナが引きずっ たものらしい。 シマウマの残肉を食べるミミヒダハゲワシ このシマウマは昨夜ライオンに襲われて食べられ、そのあとハイエナがかぶりつき、最後は ハゲワシが掃除している。まだ1日もたっていない。残された骨は、天日にさらされカラカラに なってやがて土になり、植物の栄養分になっていくことだろう。その植物をシマウマや草食動物 が食べる。これは自然の摂理である。 その後、車はスピ-ドを上げはじめた。何かの情報が入ったらしい。20分後大勢のサファリカ- が集まっているところにきたが、何も見えない。どうやらチ-タ-が灌木の茂みの中に潜んでいる らしい。 しばらくすると、藪の中からチ-タ-の頭がわずかに見えてきたが遠い。待つこと15分、やっと チ-タ-が姿を現わし、草原を歩きはじめた。子供もいる。親チ-タ-はあまりの車の多さに驚い ている様子だつたが、子供たちはじゃれあって遊んでいた。 草原に姿を現したチ-タ-、子供もいる サファリカ-の様子を見るチ-タ- 車はホテルへの帰路につき走っているときゾウの家族に出会う。近づくとゾウの方も眼の前まで やってきた。なにやら怒っている。いつものおだやかな顔ではない、うなり声をあげて抗議して いる様子。それに気づいた別のドライバ-、ドンガさんが 「車のエンジンを止めろ!」…指示にしたがいケネディさんがエンジンを止めると、ゾウは静かに 立ち去って行った。ゾウにとって、車のエンジンの音は危険を感じるのかもしれない。 時刻は6時、空に黒い雲が出てきて虹がかかってきた。それを背景に1頭のゾウが歩いている。 めったにない光景だ。カメラを向ける。 虹がかかる草原で草を食むアフリカゾウ その後、ハゲワシがシマウマの肉を食べていたところにセグロジャカルが現れ、さらに小さく なった骨の匂いをかいでいたが、すでに肉はないことを知ると茂みの奥へ去って行った。 セグロジャッカル 車窓から、盛りあがった土の上に止まるトサカゲリが眼につく。夕陽のなかに片足でスックリと 立っていた。何かエサでもさがしているのだろうか…。 トサカゲリ 6月29日 マサイマラ→ナクル湖畔 この日はマサイマラを離れナクル湖畔に向かう。出発する前、庭を散策しているとプ-ルの前に アフリカヒヨドリが飛んできた。水を飲みに来たらしい。尾羽の付け根が黄色いのが特徴。 アフリカヒヨドリ 7時30分ホテルを出発、未舗装のガタガタ道を走り午後2時ナクル湖畔のホテルロッジに着く。 ロッジで昼食、しばらく休憩したあとサファリに出かける。 出発してまもなく、アカシアの木の上にライオンがいた。珍しい、ヒョウは木登りが得意だが、 まさかライオンが木に登るとは...このライオン木の上で辺りを見回していたが、高い所から獲物 に狙いをつけていたのか…その視線には、群れをなして草を食むシマウマやインパラがいた。 アカシアの木の上にライオン シマウマとインパラの群れ 夕暮れの草原に数頭のシロサイがいた。遠くから見ても非常に大きい、体長は約4m、体重は 3トン以上にもなるという。鮮やかな白いものもいれば灰褐色のものもいる。体色が白いから シロサイというのではないらしい。クロサイとの違いは口の幅が広く、角は細く長い。また首の うしろに大きなコブがある。 シロサイ 灰褐色のシロサイ 草原向うの湖にはフラミンゴの大群が遠望できた。ガイドブックなどには、最近ナクル湖に フラミンゴはほとんど見られないということだったが、かなりの大群がやってきていた。季節的な ものか、あるいは少し捕食条件がよくなったのか…。しかし、かつてはこの湖をいっぱい埋める くらいいたというから、その数は大幅に減っているのだろう。 ナクル湖フラミンゴの大群 日が薄暗くなった6時前、上を見上げると枯れ木の梢に1羽の鳥が止まっていた。コウノトリの 近縁種であるシュバシコウのようだ。羽根はコウノトリに似ているが、クチバシは赤い。 コウノトリの仲間は見晴しのよい大木の上などに巣をつくることが多い。敵から身を守るためかも しれない。 コウノトリの仲間 シュバシコウ 6月30日~7月1日 早朝サファリ→ナイロビ→ド-ハ→成田へ この日、ドライバ-、添乗員の厚意により、スケジュ-ルにはなかった早朝サファリに案内して もらった。最初に出会ったのがエランド。ウシ科最大のアンテロ-プで体重は大きなもので900kg にもなる。オス、メスとも角があり、すぐれた跳躍力をもつ。ただ臆病で近づくとすぐに逃げて しまう。 エランド 次に出会ったのが、草の茎に止まっていた細長い奇妙な黒い物体。しばらくじっとしていたが ゆっくり空中に飛び出し、ヒラヒラと地上に舞い降りた。びっくりした、実に優雅である。その姿 はまるで風にあおられて飛ぶ蝶のよう、いや黒い衣をひるがえして舞う天女のようにも見えた。 これが野鳥であるとは... 名前はコクホウジャク(黒鳳雀)、まさに小さな鳳凰のような神の鳥に例えてもいいかもしれない。 コクホウジャク(黒鳳雀) コクホウジャク コクホウジャクはふだんは目立たない黄色っぽい鳥だが、繁殖期になるとオスは劇的に変身、 体色は黒く変わり、尾羽は体の3~4倍にまでなり、メスを誘うために悠々と飛び回るという。 近くにはカンムルヅルがいた。あでやかな色が辺りの風景に映え、実に美しい。草叢に首を 入れ何かを探したり、ときにこちらを見たりしているが、人間を恐れたりしている様子はない。 ウガンダの国鳥でも ある。 こちらを見るカンムリヅル カンムリヅル キリンもたくさん見られた。草原をゆっくり歩いたり、森のなかでは長い首を伸ばして木の葉を 食べるものもいた。このキリンはひざ下が白いロスチャイルドキリンという。名前は、イギリスの 学者ロスチャイルドからとったもの。 ロスチャイルドキリン ロッジへの帰り道、茂みでエサを探すたくさんのホロホロチョウに出会う。鶏のようなとぼけた 顔をして親しみを感じる鳥だ。 ただ、西条八十が作詞した、愛染かつらの主題歌「旅の夜風」のなかにある”ホロホロ鳥”はこの ホロホロチョウをイメ-ジしたものではない。日本の古い歌集にでてくる 「山鳥のほろほろと鳴く声きけば...」から思いつき使ったものらしい。 ホロホロチョウ ロッジで朝食を済ませたあと庭を散歩していると、池に2羽のエジプトガンがやってきた。 しばらく池で泳いでいたが、そのうちの1羽がアカシアの木に飛んできた。私たちを見送りにきて くれたのか...。 ロッジの屋根にはツキノワテリムクがやってきて高らかにさえずりはじめた。アンボセリの ロッジで最初に出迎えてくれたのがこの鳥だったが、最終日のこの日も見送りにきてくれたのかも しれない。なかなか可愛い鳥だ...さよなら、さよなら...私もこの地を離れるのがなごりおしい...。 ロッジの屋根でさえずるツキノワテリムク エジプトガン 私たちは10時ホテル出発、午後1時半位だったか?ナイロビ空港に着く。 ドライバ-兼ガイドのドンガさんとケネディさんはここでお別れ。二人は陽気で親切、すばらしい 眼でケニア動物サファリを案内してくれた。今でも躍動感あふれる動物たちの姿が眼に浮かん でくる。 そして添乗員の大崎さん、彼女はよく気がつき、いつも明るく接して雰囲気を和ませてくれた。 この旅を楽しませてくれたのはこの3人のおかげといっていい。ありがとう、ありがとう...また 逢う日まで... 2018.7.24 ― 了 ― 「私のアジア紀行」 http://www.taichan.info/ |