本白根山の高山植物 2013.8.4~8.5 コマクサ 本白根山 標高2171m 2013.8.4 私は今年8月4日、元会社のOBたち5人と本白根山から万座温泉までのハイキングを楽しんだ。 この歩こう会は20余年前の現役のころから続けているもので、私が当番幹事を務めた今回は、 120回目に当っていた。 昼食後、白根火山のレストラン前を出発、弓池を右に見ながら歩いてゆくと白根山スキ―場に 出る。そのリフトの下をくぐり、暗い山道に入って行くと、辺りはオオシラビソ、ダケカンバ、 ナナカマドに覆われ、林下縁にはチシマザサ、イタドリ、フキなどが繁る。ゆるやかな山道だと 思っていたが、急坂を上ったり下ったりをくりかえす。意外にキツイ。ようやく尾根道に出ると、 左下に鏡池を見るようになる。そこからしばらく行くと急に視界ひらけ、眼下に大きな窪みが 広がっていた。本白根山の噴火口跡である。 本白根山噴火口跡 2013.8.4 そのゆるやかな稜線を上っていたとき、ハットするような鮮やかな花びらが目に飛び込んできた。 高山植物の女王コマクサだ!、丸いマット状のクッションのような草を束ね、その上に赤い花を つけている。その姿は 眼を見張るように美しい。一瞬立ち止まり、夢中になってカメラを向ける。 コマクサ 本白根山頂付近 2013.8.4 辺りを見廻すと驚いたことに、コマクサは群落をなして広がっていた。山頂から噴火口にいたる 斜面まで、華やかなコマクサに彩られていたのである。その範囲は非常に大きい。私は何回か コマクサに出会って いるが、これだけ大きな群落を見たのは初めてだった。この高山の強風地帯 にあって生きている姿は、たくましくもあり、けなげでもある。 コマクサは漢字では駒草と書く。駒は小馬に通じ、小さい馬の意味。転じて馬と同義になった。 花は下向きに咲くが、花びらの2枚がくるりとそりかえる。その形が長い馬の鼻面を思わせること から、駒草と名付けられたらしい。 ケシ科の植物で北海道や、本州の中部以北の砂礫地に生える多年草。根茎は地中深くにあり、 葉は細かく切れ込み、粉をかぶったような白っぽい緑色。 さらにハクサンシャジンとハクサンオミナエシがコマクサの周りに小群落をつくっていた。 コマクサの赤色、ハクサンシャジンの青色、ハクサンオミナエシの黄色、みごとなコントラストで ある。この色彩の乏しいガレ場に、今の時期だけに見られる華やかな光景なのだ。 ハクサンシャジン 2013.8.4 ハクサンオミナエシ ハクサンシャジン(白山沙参)はツリガネニンジン(釣鐘人参)の高山型。ハクサンというのは 最初に白山で発見されたため、つけられた名前。沙参はツリガネニンジンの漢名。ちなみに漢名と いうのは和名に対する中国での名称。 キキョウ科の植物で、北海道から中部以北の高山の砂礫地や草原に生える。葉は3~4個輪生する。 花は釣鐘のように下向きにつく。 ここのハクサンシャジン、荒涼とした岩場にあって、薄青色の花がひときわ映えて眼を楽しませて くれた。 ハクサンオミナエシ(白山女郎花)はスイカズラ科の植物。別名コキンレイカともいう。 山地の岩場などに生える多年草。葉は対生する。オミナエシよりは背丈が低い。この花は明るい 樹林のなかにも見えられた。 鮮やかな黄色の花がよく目立って美しい。 オミナエシ(女郎花)は秋の七草の一つ。女郎は遊女の意味もあるが、この場合はやさしい女性 という意味に捉えたい。ただこれは私の勝手な解釈。オミナエシを見ていると、どこかなよなよと した女性らしい風情を感じるからだ。 まもなく山頂に着く。ここは標高2171m。本白根山の大きな山容を眺めながらしばらく休憩する。 本白根山頂にて 2013.8.4 本白根山頂に咲くコマクサ 山頂から広々とした高原を見渡しながら、下って行く。風は無風。しかし乾いた空気が清々しい。 万座温泉への道をとり藪のなかに入ると、オオシラビソ、ダケカンバ、カラマツなどが辺りを覆い、 道脇にはツルリンドウ、ゴゼンタチバナの花々、そしてすでに花を終えたマイヅルソウなどが眼に つくようになる。 藪をぬけたところで、赤い小さい実をたくさんつけたアカモノに出会う。1ヶ月前は白い可憐な 花を咲かせていたと思われる。 アカモノの実 2013.8.4 アカモノの花 八幡平 2013.7.2 アカモノ(赤物)は果実が赤く熟し食べられるので、アカモモ、これがなまってアカモノに なったといわれる。イワハゼとも呼ばれる。ツツジ科の植物で、山地~高山の草地や林のふちに 生える常緑小低木。 翌朝、プリンスホテルの裏の高原でヤナギランの群落が見られた。見渡す限り高原はヤナギラン の花々で埋めつくされていた。壮観である。ヤナギランの強い生命力を感じる。一つ一つの花は とても可愛い。 ヤナギランの花 2013.8.5 ヤナギランの群落 ヤナギランは漢字では「柳蘭」と書く。細長い葉をヤナギに、花をランにたとえた名前らしい。 ただラン科の植物ではなくアカバナ科の植物である。中部地方以北の、山地~亜高山の日当りの よいところに生える多年草。 この日私は一人になり、白根火山レストラン前から地蔵岳(2160m)を左に見ながら芳ヶ平 方面へ散策した。 歩きはじめて間もなく小雨が降りはじめ、荒涼とした地蔵岳が霧雨のなかで不機嫌に見える。 芳ヶ平への道から見た地蔵岳 2013.8.5 しばらく行くとカラマツの疎林が見えはじめ、その周りに生えるアキノキリンソウ、ハクサン オミナエシ、イタドリ、ヤマハハコなどが眼を楽しませてくれる。道はほぼ平坦、岩の破片や石が ゴロゴロところがっているが、それほど歩きにくいことはない。大きな高原の風景を見ながら のんびりと歩いて行く。ときどき眼につく可憐な花にカメラ向ける。 アキノキリンソウ 2013.8.5 ヤマハハコ アキノキリンソウは秋の麒麟草または秋の黄輪草と書く。黄色い花が輪生状に咲く「キリンソウ」 にたとえて この名があるといわれている。ただ、黄色の花が多数集まって咲くところは共通して いるが、キリンソウはベンケイソウ科、アキノキリンソウはキク科、それぞれの姿かたちは違って いる。山地や丘陵の日当りのよいところに生える多年草で、北海道~九州に見られる。花期は 8~11月。 ヤマハハコ(山母子)は、山地~高山の日当りのよい乾いた草地や礫地に生える多年草で、茎や 葉の裏 は綿毛におおわれている。キク科の植物。 春の七草の一つである、近縁種のハハコグサ(母子草)も全体に綿毛におおわれていて、この名前 は果実 についている冠毛がほおけだつことからホオコグサと呼ばれ、これが転訛したという説が あるらしい。私はこの花を見ると、母親のようなやさしさを感じることがある。名前の響きから くるイメ-ジかもしれない。 次に眼についたのがベニイタドリ、ガレ場の草原の中で真紅の花を咲かせ、ひと際あでやかさを 放って いた。そして岩場の陰でひっそりと、オトギリソウが小さな花を花を咲かせていた。 ベニイタドリ 2013.8.5 オトギリソウ ベニイタドリ(紅虎杖)の虎杖は漢名。イタドリは茎に赤味を帯びたまだら模様があり、中国 ではこれを虎の皮にたとえて虎杖と呼び、根茎を乾燥した虎杖根(コジョウコン)を利尿剤、緩下剤 などにする。 若い茎には酸味があり、子供の頃私は、これをスカンポと呼びよくカジッた。このスカンポよりも 酸味の強いスイバも好んで食べた。それは空腹を満たすためでもあった。そのためかどうか、私は 今でもスッパイものが好きである。 イタドリの花や果実がとくに赤いものを、ベニイタドリまたはメイゲツソウと呼ぶ。タデ科の植物 で、日当りのよい荒れ地や土手などに生える多年草。ベニイタドリは高山のガレ場によく見かける。 オトギリソウ(弟切草)は、この草を鷹の傷を治す秘薬としていた鷹飼いが、その秘密をもらし た弟を切り殺したという伝説により、この名前がつけられたものらしい。全草を乾燥して止血剤、 うがい薬にされるという。日当りのよい山野に生える多年草。 さらに歩いて行くと、それまでなだらかだった高原が徐々に落ち込みはじめ、二つの山に挟まれ た峡谷状になったところに出ると、周りに低いダケカンバやナナカマドが見られるようになる。 しかしまだ見通しはよい。紅葉しはじめたナナカマドが、周囲の景観に映えて美しい。 紅葉しはじめたナナカマド 2013.8.5 ナナカマドは漢字では七竈と書く。七度カマドに入れても燃えないという説があるが、材が堅く てなかなか燃えにくいという意味でこの名前がつけられたものだろう。 山地から亜高山に生えるバラ科の小高木で、6~7月ごろ白い小さな花を多数つけ、秋になると 赤い果実と紅葉した葉が鮮やかに映える。果実は落葉後も残る。 雨が激しく降りはじめてきたので、芳ヶ平湿原手前で引き返すことにした。バスの時間に間に 合わないと思ったからでもある。傘をさして下を見ながら歩いていると、往路には気づかなかった クロマメノキが眼についた。 この時期まだ花をつけているものもあれば、すでに果実をつけている ものもあった。 クロマメノキの花 2013.8.5 クロマメノキの果実 クロマメノキはブル-ベリ-と同じ仲間で、白い粉をかぶったような濃い藍色の実は美味しい。 実を一つ口に入れてみたが、まだ堅くて本来の甘酸っさはなかった。美味しくなるまでには 2~3週間はかかるだろう。果実は多汁でブル-ベリ-と同じようにジャムなどにされる。 ツツジ科の植物で、亜高山~高山の日当りの良い砂礫地や林のふちなどに生える。6~7月、 赤味を帯びた小さな壺型の花が咲く。 あと3週間もすればオヤマリンドウやエドリンドウが辺りを彩りはじめ、さらにその先になると ダケカンバやナナカマドなどが紅葉し、この高原の風景もまったく違ったものになるにちがいない …そんなことを思いながらバス停へ向かった。 那須岳の風景と南月山の高山植物 2013.8.12 茶臼岳 1915m 南月山より 2013.8.12 私は本年8月12日、茶臼岳の南に連なる南月山にぶらりと出かけてみた。連日の暑さから逃れ、 南月山の高山植物を見ながらのんびりと歩いてみたかったからである。そして、久しぶりに山麓の ひなびた北温泉を訪ねてみたいという思いもあった。 早朝千葉を出て上野から黒磯まで行き、そこからバスに乗り換えて9時45分那須山麓駅にに着く。 いつもなら山麓駅から山道を登り、峰ノ茶屋から左への道をとるのだが、今回は時間の短縮と少し ラクをしたいと思い、ロ-プウエイでその山頂駅まで上がった。そこからはなだらかな高原が広がり、 平坦な道が続いて いると想像していたが、いきなり坂道が眼の前にあり、そこを登りつめて下って 行くとまた坂道に出会ったりして、思ったよりはアップダウンの多い山道だった。しかし、広々と した高原を見渡しながら歩いて行く気分はなんとも気持よい。道脇には、オヤマソバ、ウラジロ タデ、マルバシモツケ、ベニイタドリなどがやたらに眼につく。というより、それぞれが辺り一面に 群落をつくっている。ゆっくりと歩きながら、ときに立ち止まりカメラを向ける。 マルバシモツケの実 2013.8.12 ウラジロタデ マルバシモツケ(丸葉下野)は、山地から高山の日当りのよい岩礫地に生える落葉低木。 6~7月、枝先に小さな白い花が多数集まって咲く。オシベは花弁より長く目立つ。この時期すでに 花を終えて赤茶色の実をつけていた。バラ科のシモツケ属。 ウラジロタデはタデ科の多年草で、葉の裏面は綿毛が密生して白い。北海道~中部の高山の 岩礫地に生える。花は円錐状に多数咲く。 次に眼に入ってきたのがホツツジ、これもガレ場の草原のあちこちに群生しているのが見られた。 ホツツジ 2013.812 ホツツジは、山地の日当りのよいところに生えるツツジ科の落葉低木。3個の花弁がクルリと そりかえった花を円錐状につける。メシベを長くつきだしているが、先端はそりかえらない。 ミヤマホツツジのメシベは象の鼻のように上に大きく曲がっている。 牛ヶ首までくると、それまで学校から引率されてきた多勢の子供たちはいなくなり、ハイカ-も 少なくなってきた。ここから左への道をとり、南月山へ向かう尾根道をのんびりと登って行く。 空は晴れわたり、澄んだ空気が清々しい。うしろを振りかえり茶臼岳を仰ぎ見る。 茶臼岳 1915m 2013.8.12 茶臼岳は那須連峰の主峰で標高は1915m、今でも噴煙を上げる活火山である。茶臼岳の北側 には朝日岳(1896m)、最高峰の三本槍岳(1917m)、その先に旭岳(1835m)、 甲子山(1548m)が聳え立ち、南側には南月山(1776m)、黒尾谷岳(1589m)が連なる。 これらの山々を総称して那須岳と呼ばれているが、その姿かたちは堂々たる風格を感じる。 「那須岳はその裾野によって生きている」と日本百名山に書かれているのは、そのへんにあるの かもしれない。 まもなく灌木の中に入ると、ノリウツギ、ヒメシャジンが眼につくようになる。ムシカリも 赤い実をつけている。ハット眼を引いたのがトリカブト、この山で久しぶりに出会った。 ムシカリの実 2013.8.12 トリカブト ムシカリは葉の「虫食われ」がなまってこの名がつけられたらしい。オオカメノキともいう。 花期は4~6月。花穂の中心部には小さな花が多数集まり、そのまわりを白い装飾花がとりまいて いる。果実ははじめは赤くやがて黒く熟す。山地に生えるスイカズラ科の落葉低木。 トリカブトは漢字では鳥兜と書く。その昔、鳳凰の頭の形をした冠を鳥兜と呼び、舞楽の樂人が 用いたらしいが、この名前はそれをイメ-ジしてつけらたものかもしれない。また花の形は鶏の トサカ(鶏冠)をも連想したくなる。トリカブトはキンポウゲ科の多年草で、猛毒がある植物と して知られているが、花は鮮やかな青色をしてとても美しい。 さらに歩いて行くと林のふちにコバギボウシが点々と見られ、なかには一つの固まりとなって 咲いているのもあった。 コバギボウシ 2013.8.12 コバギボウシ(小葉擬宝珠)はギボウシのなかで葉が小形なのでこの名がある。キボウシは つぼみの形を橋の欄干の柱頭などに飾りとしてつけられる、擬宝珠にたとえたものらしい。花を 下向きにつけたものが多いが、花を開いてやや上向きに咲いているものもあった。山野の林内や 湿地に生える多年草。以前はユリ科になっていたが、新しい図鑑ではキジカクシ科に改定されて いる。 灌木の道をぬけ明るい尾根上に出たところで、草叢にアキノキリンソウ、ベニイタドリ、マルバ ダケブキ、そしてシモツケソウが咲いていた。 マルバダケブキ 2013.8.12 シモツケソウ マルバダケブキ(丸葉岳蕗)は、本州、四国の山地~亜高山の林内や、湿り気のある草地に 生えるキク科の多年草。葉も花もとくに大型で、高さは80~120cmになる。 根生葉は長さ30cm、幅40cmほどで、フキの葉に似ている。茎には2個の葉がつく。ときどき 大きな群落をつくることもあるが、ここでは2株がひっそりと佇んでいた。 シモツケソウは山地の日当りの草地や林のふちに生えるバラ科の多年草。しばしば群落をつくり、 鮮やかな赤色の花を咲かせるのだが、ここでは狭い範囲にすこし見られただけで、花もやや色あせ ていた。 やがて広々とした岩場の上を歩くようになり、さらに眺望広がる。右手に沼原湿原、前方に南月山 の山頂手前のなだらかな山稜が見えてくる。 南月山頂手前の山稜 2013.8.12 沼原湿原 この山稜を越えれば山頂が見えてくるはず。右手の向うに電力調整池の沼原池。この辺りは秋の 紅葉が美しいところ。 岩場の周りの草叢にそれまで見られなかったハクサンオミナエシが、そしてイワインチンが咲いて いた。このイワインチンに出会うのは久しぶり、カメラを向ける。 イワインチン 2013.8.12 ハクサンオミナエシ イワインチン(岩因蔯)のインチン(因蔯)は聞き慣れない名前だが、ヨモギの漢名らしい。 線形の葉が深く裂け、裏面は綿毛を密生して銀白色をしてところから、ヨモギをイメ-ジして この名がつけられたのかもしれない。東北南部から中部地方の高山の岩場や、崩壊地周辺の 草原などに生える、キク科の多年草。 さらに歩いて行くと辺りにハイマツが眼につきはじめ、黒い土の大地に冷えてかたまった溶岩が ゴロゴロところがるようになる。ゆるやかな山稜を上ってゆくと、やや遠くに南月山の山頂が見え てきた。そこから下りまた少し上って行くとまもなく山頂に着く。時計を見ると丁度12時。 ここは標高1776m。山頂付近ではいくつかのハイカ-のグル-プが昼食をとっていた。私も近くの そばに置かれた長椅子に腰かけ弁当を開く。 ここからの展望はすばらしい。北方面には那須連峰が連なり、東側はなだらかに下り落ちて 那須高原へと続き、西側には沼原湿原から男鹿岳、日留賀岳、さらに遠く会津駒ヶ岳や日光連山 まで見渡せる。 南側から急坂を下って行くと、黒尾谷岳を経て那須街道の一軒茶屋まで山道が続いているが、 このコ-スは非常に長い。随分前に歩いたことがあるが、3時間半位かかった。 南月山に初めて来たのは19年前の1994年5月末、それから3~4回この山を訪ねてきている。 誰でも気楽にハイキング気分で登れる山なのである。 30分の昼食タイムを終えて来た道を引き返す。ヤブの中に入ったところで見たことのない チョウに出会う。私の眼の前でヒラヒラと飛びまわり、ときどきノリウツギの花にとまったり、 地面に下りてきたりしている。 黒紫の羽根の外側は黄色と、その内側にルリ色の小石を散りばめたような帯でフチどられている。 チョウを詳しく観察したこともなければその知識もなかったが、きれいなチョウだと思ったので カメラを向ける。 キベリタテハ 2013.8.12 ノリウツギにとまるキベリタテハ このチョウ、時々木の花に止まるがすぐに飛び立ち、じっとしていない。シャッタ-チャンスが なかなかとれなかったが、地面に下りて石の上に止まったところでパチリ、うまく撮れた。そして ノリウツギの花に止まったところでもまたパチリ、なんとか撮ることができた。 このチョウの名前、あとで調べてみたら、キベリタテハ(黄縁立羽)と判った。黄色い縁の羽根 をしたタテハチョウと言う意味なのだろう。タテハチョウ科のチョウで夏は山岳地帯にいるが、 秋は低地へ移動して越冬するらしい。年一回8~9月に出現、成虫で越冬、翌年の7月ごろまで生き 残るといわれる。北海道、中部以北に分布する。 牛ヶ首からはロ-プウエイ方面への道はとらず、真っすぐに歩いて峰の茶屋を経て北温泉に 向かうことにする。 茶臼岳の西斜面を見上げると、激しい勢いでガスを吹き上げていた。噴火口はいくつかあり、 ガスの強い臭いが鼻をつく。周りの岩石は硫黄のためか黄色に染まり、不気味である。これは 茶臼岳の鼓動かもしれない、まさにこの山は生きている…そんな思いをもつ。 ガスを吹きあげる茶臼岳 2013.8.12 まもなく峰の茶屋に着く。ここはいつも強い風が吹くところだが、今日は多少風はあるものの おだやか。 やや右手に朝日岳が大岸壁を見せ、鋭い山顚を空に突きあげている。その雄大な山容にしばらく 見とれる。 朝日岳 1896m 2013.8.12 峰の茶屋から山麓への道 峰の茶屋から西方面に道をとれば、ひなびた三斗小屋温泉に行くことができる。 真っすぐ北方面に進み、少しキツイ岩場の道を登り切れば、展望のよい尾根道に出る。 そこから右に行くと朝日岳へ、さらに北へ進むと清水平を経て三本槍岳に達する。その他にも いろいろなコ-スがあるが、そのためにはもう一泊必要。今日はあきらめて山麓へ下ることに した。 ガレ場の道を下った樹林帯手前の草叢で、ハナヒリノキ、ネバリノギラン、樹林の中でゴマナが 眼についた。 ネバリノギラン 2013.8.12 ゴマナ ネバリノギラン(粘り芒蘭)は花穂が粘り、ノギ(芒)のあるランという意味だが、芒がある わけではない。オシベが長くつきだし、花びらの先がとがって見えることから芒の名がついた ものらしい。 またランではなく、ノギラン科の多年草。以前はユリ科になっていたが、最近ノギラン科という 新しい科が設けられ改定されている。山地の草地や砂礫地に生える。 ゴマナ(胡麻菜)は葉がゴマに似ており、若苗が食用になることからつけられた名前らしい。 山地の草原に生えるキク科の多年草。 さらに樹林の中を下って行くと、ヤマハンノキ、ヤハズハンノキ、ヤシャブシ、ミズナラなどが 繁り、ヤマユリ、が美しい姿を見せ、そして赤いキノコが暗い草叢にポツンと生えていた。 ヤマユリ 2013.8.12 タマゴダケ ヤマユリ(山百合)は本州の近畿以北に自生するが、栽培されることも多く、北海道、四国、 九州では野生化したものも見られるらしい。高さは1~1.5mにもなり、香りのある大きな花を たくさんつける。山地や丘陵に生えるユリ科の多年草。 赤いキノコはタマゴダケらしい。鮮やかな色で毒キノコに見えるが、食用になるという。 これで今日の山歩きはすべて終わった。わずか1日のハイキングだったが、面白かった。 那須岳は四季を通じて楽しめる。春の新緑、夏の高山植物、秋の紅葉など…。今度来るときは、 もうすこし余裕をもった日程で足をのばしてみよう。時期は秋の紅葉がいい。そんなことを思い ながら、私は北温泉へと歩いて行った。 ー 了 ー 2013.9.1記 私のアジア紀行 http://www.taichan.info/ |